音楽物語
音楽物語「祈りの島」
カクレキリシタンの物語
大迫淳英が2015年から取り組んでいるプロジェクト。このきっかけは一人の画家との出逢いでした。
「ななつ星」の乗務中、由布院駅に列車が停車している時、駅舎に併設されているアートホールでコンサートを実施していました。そこで個展をされていた画家「ウエダ清人」氏と出会いました。五島出身のウエダ清人氏は五島列島にある教会をすべて描くというテーマに取り組まれていました。そのご縁で、私も五島へ行きカクレキリシタンに出会ったのです。私はその歴史に引き込まれて行きました。しかし島では世界遺産登録に向けて、宗教的な側面、教会と地元の方々との問題、いろいろな思いが混沌としていました。もちろんテーマは宗教かもしれないけれど、そういう歴史があったのは事実であり、今の長崎、今の日本はその歴史の上に形づくられている訳ですから、これはひとつの文化であると考え「音楽で文化として伝えなくてはならない。音楽物語にしよう」と音楽物語「祈りの島」の制作に取りかかることにしました。
そこから、通算で20回以上五島列島に渡り、島々を巡り、カクレキリシタンの方々に話しを聴き、勉強をしながら想いを深めてこのテーマに向き合ってきました。当初は「五島列島カクレキリシタンの物語」という形を目指したのですが、その後、登録を目指していた「長崎の教会群」ではイコモスのよい答申に結びつかないかもしれないと一旦推薦を取り下げるという事態に。その後、潜伏キリシタンの祈りの様式・形成・変容を中心としたテーマに視点を変え再度推薦を受け登録を目指すことになりました。このテーマはまさに私が進めている音楽物語のテーマにピッタリ合うものでした。250年もの間、信仰を守り抜いたキリシタンの方々の事を、私は文化として伝えなくてならないと心に誓いました。五島列島をテーマにしていた音楽物語の範囲を広げ、私は平戸、生月、長崎、茂木や福田、黒崎、出津、島原、大村、天草と、あらゆるところに出かけ勉強を続けました。また、世界遺産登録の発起人である柿森氏に薦められて「長崎の潜伏キリシタン研究会」に所属し、研究を進めました。そして、7年の年月を経て2021年にようやく台本が完成。残るは最終曲「讃歌」の合唱部分を創るだけとなりました。
[概要]
音楽物語「祈りの島」
脚本:大迫淳英
作曲:中原達彦
絵画:ウエダ清人
監修:柿森和年
公演時間:40分
全10曲+BGM11曲で構成